P5 Backupでの「プログレッシブ・バックアップ」による世代管理バックアップ

P5 Backupでのプログレッシブ・バックアップの考え方と運用方法


■ バックアップのサイクルを考える

まず、「世代管理バックアップ」(バックアップ・サイクル)という概念を考えてみましょう。この概念はP5 Backupのユーザーインターフェイスには登場しません。周期的に繰り返されるデータのバックアップを、親、子、孫といった実際の家族になぞらえて作り出された概念が世代管理バックアップです。

1周期=サイクルは、次のフルバックアップまでのすべての後続の増分バックアップなどを含めたものを指し、新しい完全バックアップまでを意味します。

P5 Backupは、この世代管理バックアップの運用に対応します。サイクリックバックアップなど、P5が持つバックアップの幾つかのバックアップ機能は、周期的な繰り返しバックアップの考え方に基づいて作られています。

 

■ プログレッシブ・バックアップの設定

プログレッシブ・バックアップの設定自体は非常に簡単です。単純に、増分バックアップを実行するためのバックアップタスクが含まれているバックアップ・プランを定義します。
たとえば、1日ごとの増分バックアップを設定し、さらにプランの追加オプションでは、適宜データ保持時間(リテンション・タイム)を設定することができます。(デフォルトでは28日間または4週間)

p5 pg01

p5 pg02

● 備考1    GUI上のリサイクル処理にある英文の意味は以下のようになります。

このバックアップ・プランでバックアップされたデータを復元可能な状態に保持する期間を定義します。ボリュームが書き込まれるたびに、ボリュームの有効期限はこの保存期間に応じて設定されます。有効期限に達すると、テープは「リサイクル」に設定され、システムによって使用済みテープは再利用されます。再利用をしない設定も可能です。

● 備考2    リテンションタイムとは保持期間を意味します
このバックアップ・プランがどのように機能するかを下表に示します。

*例では、フルバックアップは、いくつかの予備のスペースを残して、1つのテープに収まること、およびデータ保持時間が1週間に設定されていることを前提としています。

1日目 … フルバックアップが実行され、すべてのデータがテープ1に記録されます。
2日目 … 増分バックアップが実行されテープ1に追記されます。
3日目 … 増分バックアップが実行されテープ1に追記されるか一杯になりテープ2に記録されます。
4〜9日目 … 継続して増分バックアップが実行されテープ2に追記されます。
10日目 … この日、テープ1への最後の書き込みから1週間が経過したのでテープの保存有効期間が満了。増分バックアップはテープ2、テープ3と継続されて実行されます。
11日目 … 10 日目からファイルが正常に保存されているテープ1 のモードは「リサイクル」に設定される。さらにテープの容量が必要な場合、テープ 1 がリサイクル使用される。増分バックアップは、テープ 3 に継続して実行されます。このバックアップ処理が続くとテープに記録された内容は保存期間より古くなる。他のテープに再度データを保存し終えるとテープ1はリサイクルのために保存対象から外れ必要に応じて再利用に活用可能になります。

プログレッシブ・バックアップのテープのライフサイクルを図式すると以下のようになります。

p5 pg03

リサイクルができる期限切れのタイプのテープとリサイクル可能なテープとの間にある違いを認識する必要があります。P5 Backupはテープに保存済みであるがまだディスク上にある対象のデータを再びバックアップします。

■ バックアップに必要なテープ本数の算出

プログレッシブ・バックアップの運用には目的のデータ容量にマッチしたLTOテープの準備が必要です。以下の式で最低限必要なテープの数量を算出することができます。

(フルバックアップに使用したテープの数) x 2 + (増分バックアップに使用したテープの数)

常にデータは増え続けるので予備のテープをあらかじめ準備しておくことを推奨します。

■ 複数のバックアップ・プランによる運用

プログレッシブ・バックアップをより高精度に行うために幾つかのプランを組み合わせて使用することを推奨します。 プログレッシブ・バックアップとフル・バックアップを組み合わせて一つのバックアップ・プランで運用することは可能ですが、混乱することが予想されます。

進行中のサイクルはプログレッシブになりますので、新しいテープが必要な際には最も古いサイクルのテープがリサイクルされます。この最も古いテープの代わりに別のバックアップ・プランまたは別のプールを使用するようにします。例えば

プラン1 … サーバー用のプログレッシブ・バックアップ
プラン2 … 別途サーバー用のプログレッシブ・バックアップ
プラン3 … サーバー以外の場所に保持されるすべてのマシンのデータを月次でフルバックアップ

という具合に、プランの隙間になってしまいバックアップされないデータを発生させることを防ぎ、テープドライブのトラブルなどで実行できなかったバックアップセッションの影響を最小限にすることが可能になります。